産経新聞大阪夕刊に「あなたの日本語大丈夫?」というタイトルで1年半にわたり掲載されたコラムの中からいくつかご紹介します。日々、若い人たちと話したり電車の中で見かけたりすることの中から、ことばにまつわることを、あれこれ思いつくままに書いたものですが、そんな中に話しことばの酸いも甘いも・・・が息づいているのではないかとも思うのです。
特集: あなたの日本語大丈夫?
2015年9月15日
テレビの国会中継を見ていると「先程、総理がおっしゃられました件につきまして...」「すでに、皆様も新聞、その他でお読みになられていると思いますが...」など、先生方の侃々諤々の議論が飛び交いますが、ちょっと待ってください。「おっしゃられました」は「おっしゃいました」「お読みになられている」は「お読みになっている」の方が敬語として十分な機能を果たしたシンプルな言い方といえるのではないでしょうか。
「おっしゃる」という尊敬語に、さらに「られる」をつけて「おっしゃられる」というのは、二重敬語、過剰敬語といわれるものです。
こんなややこしい言い方をするから、敬語は若い人から敬遠されてしまうのです。
「お亡くなりになる」を「お亡くなりになられる」などと言おうとすると、舌がもつれてしまいそうですね。先生方、もっと薄着の敬語を、とお願いしたいですね。
このほかに「言わせていただく」を「言わさせていただく」、「送らせてください」を「送らさせてください」など、余分な「さ」が入る「さ入りことば」、おビール、おコーヒーなど外来語にはあまりふさわしくない美化語の「お」など、要らないものをつけて厚着にならないように。
敬語は、できるだけシンプルに、すっきりと、
基本に忠実な形で使いたいものです。
また、敬語を使うときは、全体のバランスを考えて「どなたと行ったんですか」は「どなたといらっしゃったんですか」と丁寧なことば同士でバランスをとります。
「先生がお立ちになって話す」より「先生が立ってお話しになる」のように前より後を丁寧に言う方が自然な感じに聞こえます。
敬語は難しいと考えず、とにかく使ってなれることが大切。そして他の人が使う敬語を、耳をすまして聞いてください。いつの間にか敬語が身についていますよ。