HOME > 特集コンテンツ > 「お」や「ご」のつけすぎにご用心
産経新聞大阪夕刊に「あなたの日本語大丈夫?」というタイトルで1年半にわたり掲載されたコラムの中からいくつかご紹介します。日々、若い人たちと話したり電車の中で見かけたりすることの中から、ことばにまつわることを、あれこれ思いつくままに書いたものですが、そんな中に話しことばの酸いも甘いも・・・が息づいているのではないかとも思うのです。
特集: あなたの日本語大丈夫?
2016年6月 6日
お肉にお野菜、お塩、お砂糖、おしょうゆ...それにお味噌にお酢...。料理番組を見ていると、何と「お」のついていることばの多いことか!でも、おニンジン、お油、おケチャップとは言いません。「お」や「ご」と相性の良いことばと、そうでないことばがあるのでしょうか。
「お店でご本を買っておみやげにしました」などというときの「お」や「ご」を美化語と言います。
美化語は、相手への敬意に関係なく、ことばづかいを丁寧に、上品にしたいという気持ちから使われることばです。
この「お」や「ご」は使われる場面によって、いろいろな働きをします。次の例をみてください。
(1)先生からいただいたお手紙を拝見しました。
(2)私からお手紙でお知らせします。
(3)私、お手紙を書くのは苦手なんです。
(1)は、相手から来た手紙なので、尊敬の意味で「お」が使われています。(2)は、自分が出すのですが、相手へ出す手紙なので謙譲の意味で「お」が使われています。(3)は尊敬、謙譲に関係なく、ことばを飾る美化語として使われています。
ことばはあまり飾りすぎると、うるさく感じられたりいやみになったりします。美化語の「お」や「ご」は必要最低限にとどめるぐらいの使い方がスマートです。
ただし、おでん、おこわ、お化け、おしゃれなどのようにひとつの語として「お」を切り離すことのできないことばもたくさんあります。
おにぎりとにぎり、ごちそうしてもらうのなら「お」のついていない「にぎり」の方がいいですね。
他に「やる」を「あげる」、「寝る」を「やすむ」、「死ぬ」を「なくなる」などというのも美化語的なことばといえるでしょう。