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あなたの日本語大丈夫?

特集
あなたの日本語大丈夫?

産経新聞大阪夕刊に「あなたの日本語大丈夫?」というタイトルで1年半にわたり掲載されたコラムの中からいくつかご紹介します。日々、若い人たちと話したり電車の中で見かけたりすることの中から、ことばにまつわることを、あれこれ思いつくままに書いたものですが、そんな中に話しことばの酸いも甘いも・・・が息づいているのではないかとも思うのです。

特集:

2014年10月15日

「ご利用できます」はなぜだめ?

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「ソファーとしてもベッドとしてもご利用できます」
「この入り口はご使用できません」
などと書かれているのをよく見かけます。
TVのCMなどでも耳にすることがあります。
あまりにも頻繁に使われているので誰も気にしていないようです。

この言い方、もう市民権を獲得してしまったのだろうかと思うぐらいです。
しかし、この言い方を「良し」としてしまうと敬語の基本が全部崩れてしまうのです。

敬語には相手を尊重し敬意を表す尊敬語と、自分を低く扱って謙遜する謙譲語の2つの大きな柱があります。
尊敬表現の基本の形は「お(ご)~になる」で「話す」は「お話しになる」となりますから「利用する」は「ご利用になる」となり先程の場合は「ご利用になれます」「ご使用になれません」というのが正しい形です。
「お(ご)~できる」は、自分の動作を謙遜して言うときに使うことばで、
「当日までにご用意できます」「月曜日にはご報告できます」のように使います。

つまり、「ご利用できます」は相手に対して謙譲表現を使ってしまっているのです。いくら「ご利用」と「ご」をつけても尊敬表現にはなりません。
これを大目に見てしまうと、もう尊敬語と謙譲語の区別がなくなってしまうのです。

以下は私の勝手な推測ですが、どうも巷では「お」や「ご」をつけて「です、ます」の丁寧体にすれば敬語らしくなるという考えがあるのではないでしょうか。
「利用できます」という普通体では相手に失礼、と思って「ご利用」と「ご」をつけてしまったのが間違いのもと、「お」や「ご」は何にでもつければよいというものではありません。この場合、あっさりと「利用できます」といっても失礼に当たるわけではないと私は思うのですが、いかがでしょう。
いや、やはりもっと丁寧な表現でなければ、ということなら「ご利用になれます」ときちんとした尊敬表現にするか、自分側からの謙譲表現にして「ご利用いただけます」と言っていただきたいですね。

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