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「話し合う」は「聞き合う」こと

テレビのトークショー番組が花ざかりです。政治や経済について真剣に討議する真面目なものから、ワイワイガヤガヤ、賑やかなバラエティーもどきのものまで、中身はさまざまですが、どの番組も、結局時間が足りなくて議論が尽くせず、中途半端なまま終わってしまいます。

テレビの宿命でしょうか、限られた時間の中で、視聴者を引き付け、ショーアップしていくのが目的ですから、仕方がないのかもしれません。

それにしても、出演者の数が多いこと。一時間番組で、CMなどの時間を抜くと、正味四十五分くらいなのに、多いときには十人以上のコメンテーターがテーブルについています。いったい一人当たり何分、話ができるのでしょうか。

議論が白熱してくると、一人が喋っているのに横やりを入れてくる人がいたり、さらに声を張り上げて何人もの人が喋ったりして、カメラも右往左往、誰を撮ったらいいのか分からない状況になります。

でも、前の人の話が一段落したら自分の意見を述べようなどと思って待っていたら、ひと言も喋らないうちに番組が終わってしまいますから、他人のことなど構っていられません。何としてでも、自分の言いたいことを言わなければならないのです。

かくして、大勢の人たちが喚き立て、聞いている方は、よく聞き取れないままエンディングテーマが流れる、ということになります。賑やかで面白ければそれでいい、と言ってしまえばそれまでですが、こういう番組を見て、こどもたちや若い人が、「話し合い」というものは、こんなものだ、と思ってしまうのではないかと心配になります。

相手が話しているときは、じっとその話を聞き、自分自身の問題として考え、しかる後に自分の意見を言う、という「話し合う」ときの基本的なルールをわきまえず、言い合うばかりで聞く耳を持たない人が多くなったら、心が通じ合わない寒々とした人間関係の世の中になってしまうのではないでしょうか。

「話し合う」は「聞き合う」こと、発信者と受信者の共同作業です。自分のことで精いっぱいで、相手を意識する余裕がないのでは、考え方も独りよがりになってしまいます。
この辺で、少しテンポを落として、ゆっくり相手のことを思い合い聞き合う余裕を持ちたいものです。

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