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あなたの日本語大丈夫?

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あなたの日本語大丈夫?

産経新聞大阪夕刊に「あなたの日本語大丈夫?」というタイトルで1年半にわたり掲載されたコラムの中からいくつかご紹介します。日々、若い人たちと話したり電車の中で見かけたりすることの中から、ことばにまつわることを、あれこれ思いつくままに書いたものですが、そんな中に話しことばの酸いも甘いも・・・が息づいているのではないかとも思うのです。

特集:

2016年8月 1日

語彙が減ってゆく?

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故小渕総理が、自分はボキャブラリー(語彙)が貧弱なので表現力に乏しい、といった意味のことをおっしゃったことがあり、「ボキャ貧」ということばがはやったことがありました。

昨今、若者の語彙がどんどん少なくなっている、と盛んに言われています。

ブティックに入って、ピンクのドレスを見ても、黒いスーツを見ても、「カワイイ」「超カワイイ」の連発。若い人たちの会話を聞いていると、「もう、ぶっちゃけ」「?みたいな」「まじ?」など、とても短い若者ことばに集約されていて、さっぱりストーリーがわかりません。

若い人だけでなく、お父さんは家へ帰ると「メシ、フロ、ネル」、お母さんは「早くごはん食べて」「早く勉強して」と早く早くの連発。どうも日本中が単語レベルの電報コミュニケーションになってしまったような気がします。

日本語は非常に語彙の多いことばで、広辞苑には何と約24万語(第6版)が収められています。山、水、おはようなどの和語、愛情、大変などの漢語、さらにタバコ、アルバイトなどの外来語、そしてこれらの2種以上にまたがっているとんカツ、あんパンなどの混種語、と語種も多く、ひとつのことばとほとんど同じ意味のことば(類義語)がたくさんあるので、こんなにも多い語彙数になってしまっているのです。

たとえば和語の宿屋と漢語の旅館と外来語のホテル、いいなずけと婚約者とフィアンセはほとんど同じ意味のことばです。でも日本人は、時と場合によって、それぞれのことばの微妙なニュアンスを使い分けて、豊かな表現をしているのではないでしょうか。

駆け出しの新聞記者は「同じことばを何度も繰り返し使うな、他の言い方はないのか」と注意される、という話を聞いたことがあります。人は書いたり話したりするとき、自分の内側にあるイメージとぴったりのことばを頭の中で探し、あるいは選び、表現しています。しかし、その人の体に蓄積されていることばが少なければ、気持ちにぴったり合った表現ができず、もどかしい思いをすることになるでしょう。

ことばは日常生活のコミュニケーションの手段としてだけでなく、
人間の精神活動を支える重要なものでもあります。

先祖から受け継いだ文化遺産である豊かな日本語の表現力を、このまま枯れさせてしまってもいいものでしょうか。

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