産経新聞大阪夕刊に「あなたの日本語大丈夫?」というタイトルで1年半にわたり掲載されたコラムの中からいくつかご紹介します。日々、若い人たちと話したり電車の中で見かけたりすることの中から、ことばにまつわることを、あれこれ思いつくままに書いたものですが、そんな中に話しことばの酸いも甘いも・・・が息づいているのではないかとも思うのです。
特集: あなたの日本語大丈夫?
2016年1月25日
以前、国会中継で「さはさりながら、やはりこの問題は放置しておくべきではないと思います」というような発言がありました。
聞いていて、ちょっと嬉しく懐かしい気がしたのは私だけだったのでしょうか。「さはさりながら」とは「それはそうなんだけど」という意味ですが、若い人たちの間ではあまり使われていないようです。ことばは、時代とともに、形を変えて使われるものや、新しく生まれて来るものなどあり、一方でいつの間にか使われなくなってしまうものもあります。私たちが話したり書いたりして実際に使っている語彙の事を「使用語彙」といい、読んだり聞いたりして理解できる語彙のことを「理解語彙」といいます。
日本人の「理解語彙」は3万から4万語、「使用語彙」はその3分の1くらいだといわれています。どの国のことばも同じですが、自分の考えを的確に分かりやすく相手に伝えるためには、一定の「語彙」を覚えなくてはなりません。
「日本語」の場合、会話の85%を理解するためには7000語以上を覚える必要があるといわれています。
一方、英語・フランス語・スペイン語の場合、約2000語覚えれば、会話の85%が理解できるそうです。例えば「あなた」という意味のことばも英語ならほとんど「YOU」で済んでしまいますが、日本語では「あなた」「おまえ」「君」「そちら様」「おたく」「貴殿」といったように幾通りかの表現があり、場面や状況に応じて使い分けています。たくさんのことばを覚えるのは大変ですが、それだけに微妙なニュアンスを伝えたり、自分の気持ちにぴったりの豊かな表現ができたりするともいえるでしょう。新しい「ことば」に出会ったとき、新鮮な驚きや感動を覚えることさえあります。
辞書で「花」の付くことばを調べてみると「花嵐」「花合わせ」「花いかだ」「花笑み」「花帰り」「花盛り」など、優しく風情のあるたくさんのことばに出会えます。
昔から使われてきた少し古めの表現も含めて、日本の文化である「ことば」をもう一度見つめ直してはいかがでしょう。